●お母さんの産後のからだの変化
 産後のからだは体型や体重、子宮など全身のたくさんの部分が変化しています。
 出産後の1か月間は、からだが回復するための大切な時期ですので、休養をしっかりとりましょう。そしてこの機会を出産で変化したからだを立て直すよいチャンスととらえ、自分のからだともじっくり向き合ってみましょう。

◆産後の変化
〔体 重〕出産後、赤ちゃんと胎盤、羊水が出て、約5kg減ります。
〔乳 房〕産後は更に張って大きくなります。
〔おなか〕産後すぐは、皮膚がたるんで伸びていますが、徐々に元のように戻ります。帝王切開の傷は1年ほどで気にならなくなります。
〔子 宮〕大きくなった子宮は、産後6~8週かけて収縮していきます。産後の子宮からの出血(悪露)は、赤→茶褐色→黄色→白と変化し、約2か月程度でなくなります。
〔膣・外陰部〕出産で筋肉が切れたり、腫れたり、傷ができたりしています。


●産後のトラブルと予防・対処法
◆乳腺炎(うつ乳性乳腺炎・細菌性乳腺炎)
・母乳が乳管につまり、うっ滞し、硬くなります。(うつ乳性乳腺炎)
 そこへ乳首の小さな傷から細菌が入って感染を起こすことです。(細菌性乳腺炎)
・乳腺の痛みや、腫れ、しこり、発赤、発熱などの症状が出たら、受診しましょう。
・普段からの、赤ちゃんの要求に合わせて授乳する、乳首が傷つかないようにする、両方まんべんなく吸わせるなどが予防につながります。脂肪の多い食事にも気をつけましょう。

◆尿もれ
・出産で骨盤底の筋肉が緩み、くしゃみなどでおなかに力が入ったら尿もれすることがあります。
・尿もれ専用パッド等を使用して、産褥期が過ぎた産後1ヶ月後くらいから骨盤底筋を鍛える運動を始めてみましょう。

〔仰向け姿勢の運動の一例〕
1.仰向けになり、足の裏を床につけ、肩幅に開いて膝を曲げます。
2.床からおしりを浮かせて、膝の頭から鎖骨まで一直線になるようにします。肩甲骨の下あたりまでが床から離れる状態にしましょう。
3.姿勢をキープしながら、肛門や膣を引き上げるような感覚で締めます。
4.締めたままの状態で5秒くらいかけてゆっくりと息を吐きます。息を吐ききったら力を抜いておしりを床に戻し、リラックスします。
5.5回ほど繰り返します。
※腰をそりすぎないように、お腹を締めて姿勢を維持しましょう


◆子宮復古(しきゅうふっこ)不全
・胎盤の一部が残っていたり、子宮内に感染などが起こることで、子宮の収縮が遅れることがあります。
・悪露の色や量などを観察し、気になるがことがあれば受診しましょう。(ずっと赤い状態が続く、腹痛をともなう、量が増えた など)

◆腱鞘炎(けんしょうえん)
・腱鞘炎は「使い過ぎ」による炎症です。
 出産後は赤ちゃんを抱く、沐浴時に赤ちゃんの頭を支える、授乳時におっぱいを持ったりマッサージしたりと、お母さんの手首はフル稼働です。発症したら手首の安静が必要になります。
 赤ちゃんを抱くことがつらくなりますのでまずは予防が大切です。
・授乳時はクッションや抱き枕を利用する、沐浴はご家族と協力して行うなど、腕や手首・指に負担をかけないように工夫しましょう。

◆腰痛・恥骨(ちこつ)部痛
・妊娠中には、お産に備えて骨盤を広くするため、リラキシンというホルモンが分泌されて関節が緩みます。また大きくなる赤ちゃんを支えるために重心が変わり、腰に負担がかかります。
 妊娠中・産後の骨盤ケアの不足や大きな赤ちゃんが生まれることにより骨盤の戻りが悪く腰痛が持続したり、恥骨の離開や炎症で恥骨が痛んだりします。
・妊娠中からの妊婦体操やヨガ・骨盤ケアが大切です。産後の産褥体操・骨盤ケアによって予防できますので、病産院での出産前教育や出産後教育を十分受けて予防しましょう。


●産後のこころの健康
◆マタニティーブルーズ
 産後直後から数日頃まで、わけもなく涙が出たり、不安や焦りが出たり、眠れなくなったり食欲がなくなったりすることがあります。これは「マタニティーブルーズ」と呼ばれ、全体の半分くらいのお母さんが経験するとも言われています。産後のホルモンの変化が影響して感情が不安定な状態になっているのです。
 多くは産後10日も経てば落ち着く一過性のもので、治療の必要はありません。しかし2週間以上続いたり、気持ちの落ち込みが強くなるときには、産後うつ病の可能性があります。



上図のような症状がでたら・・・
・十分な休息をとる
・気持ちを抑えない
 泣きたい気分の時には泣き、つらいときはつらいという
・夫(パートナー)や家族や友人などに悩みを聞いてもらう

◆産後うつ病
 産後うつ病は、早くて産後1~2週間目から数か月以内のあいだに、10人に1~2人が発症するといわれるうつ病です。ホルモンバランスの崩れる産後はうつ病になりやすいといわれています。
 下記のような症状があり、産後うつ病かなと思ったら、まずはパートナーや周囲の人に話しましょう。専門家の治療を受ければ、平均2~3か月でよくなるといわれています。つらい状況を我慢せず、早めに相談・受診をしましょう。

◆産後の気分についてチェックしてみましょう
□ いつもと同様に、笑うことができなかった
□ いつもと同様に、物事を楽しみに待てなかった
□ 物事がうまくいかない時、自分を不必要に責めた
□ はっきりとした理由もないのに不安になったり、心配したりした
□ はっきりとした理由もないのに恐怖に襲われた
□ することがたくさんあって大変だった
□ 不幸せな気分なので、眠りにくかった
□ 悲しくなったり、惨めになったりした
□ 不幸せな気分だったので、泣いていた
□ 自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた

上記のような症状がいくつかあり、それが続く場合は心療内科等の医師などに相談しましょう